岩瀬大輔『入社1年目の教科書』
岩瀬大輔、『入社1年目の教科書』、ダイヤモンド社、2011。
推薦図書の一つ。普段こういう自己啓発書は絶対読まないが、まあいい機会だろう。
最初に著者が「死守」してきたという3つの原則が書かれている。とりあえず大事そうなので全部書いとく。
原則①:頼まれたことは、必ずやりきる
頼まれたことは何があっても絶対にやりきる。
自主的に、督促される前に全部やりきる。
初手から「『何があってもやりきるんだ!』という強い意志を持って仕事に臨み」とすげえ熱気。だが次の原則との整合性をみるに、ここでの「やりきる」は「完成させる」というより「とりあえず一通り形にする」といった程度の意味だろう。
原則②:50点で構わないから早く出せ
提出をゴールと考えるのではなく、最初のフィードバックを貰う機会という気持ちで
斜に構えた自分が最初に思ったのは「50点の仕事は『やりきった』といえるのか?」ということだが、上記のような「やりきる」の解釈をすればまあ納得。
先生に提出した原稿がまるで別物になって返ってくるなんてのは修士の頃からザラだったので、指摘を受けることへの耐性がついたのは院生生活の一つの恩恵だと思う。
原則③:つまらない仕事はない
意味と目的を理解すれば工夫のしがいはあるよという事と、野球選手が素振りするみたいに基礎体力をつけるのも大事だよという事の2点。
そういえば二次面接では「つまらない・やりたくない仕事にどう対処しますか」的なことを聞かれた。その時は「悩んでもしょうがないので粛々とやります」みたいに答えたのだけど、あれは後者の見方として受け止めてもらえたということか?
以下個別具体的な仕事論。例によって気になったものだけ。
2. メールは24時間以内に返信せよ
メールは結論を最初に書けとも。まあ後回しにしても忘れちゃうし、ここ1年やってみようとしている「Getting Things Done」の一理念(2分以内にできることはその場でやってしまう)にも適っている。
6. 仕事の効率は「最後の5分」で決まる
上司との打ち合わせ中はメモを取り、終了後合意事項をまとめて見せに行く。
前段は当然として、後段は一度その場を離れてからというより、打ち合わせの最後に内容を確認する方が良いように思う。上司が5分後まだいるとは限らないし、間をおかず何度も聞きに来られるのもうざったいので。
7. 予習・本番・復習は3対3対3
会議は事前にテーマを共有し、各自アイデアを考えておく。会議中はその場でアイデアを考えるのではなく、議論の場にする。終了後は議事録により決定事項を共有する。
会議以外にも、準備と復習に本番と同程度の比重を置く。
8. 質問はメモを見せながら
分からないことはまず自分で調べて、自分なりの解釈と聞きたいこととを紙に書いてから聞く。
12. アポ取りから始めよ
アポイントは数週間先にしか取れないことも多いので、準備作業をする前にまず取る。
最初に期限を決めると作業の効率が上がる。
14. 「早く帰ります」宣言する
早く帰りたいときは早めに・正直に言えば良い。
話としてはこれだけだが、帰って2, 3時間勉強したいので「9時」に帰るとか、6時に帰る代わりに土曜日出社するとか書いてるあたりに著者のワーカホリックぶりが伺える。
16. 仕事は盗んで、真似るもの
他の人の行動をみて良いなと思ったら、感心するだけで終わらず、すぐに真似する。
17. 情報は原典にあたれ
フットワーク軽く、関わりのない人・組織にも臆せず聞いてみよ。
頼み方さえ誤らなければ、同業他社やライバル企業でも、情報を提供してくれるところはあります。くれぐれも「教えてくれるはずがない」などと、最初から諦めないでください。
19. コミュニケーションはメール「and」電話
メールだけだと読んでなかったりするので、大事なことは会ったり電話したりで念押しを。
BSでも営業職の人なんかよく電話してくるけど、こういうことなのだろう。ただ口頭では印象には残っても記録に残らないので、やはり使い分けが大事か。
23. 目の前だけでなく、全体像を見て、つなげよ
企業全体がどう動いているかを把握し、自分の業務が企業価値向上にどうつながるかを考える。
手始めに財務諸表を読み、自分の会社がどういった事業が成長・縮小しているのか理解する。
さらに業界・日本・世界がどう動いているか・どうあるべきか考える。
社会は分業で成り立っているんだから、こういう「経営者目線」を従業員に求めるなよとも思う。しかし企業相手のコンサルをする場合、その仕事は企業の(従業員ではなく)経営者が相手だろうから、経営者のものの見方を理解するのは必要なことなんだろう。
29. 新聞は2紙以上、紙で読め
紙で読むのは興味のない情報も入ってくることと、現物が溜まるため毎日継続する圧力になることから。
社会人になると、どうしても日経新聞にシフトする人が多くなります。(中略)しかし、年配者の購読が多い朝日を見ると、医療や介護の記事を厚くするなど、ビジネスパーソン向けの日系とは色合いが違います。
朝日新聞などは思想が肌に合わなかったりで、あまり読みたいとは思わない。しかし社会にはこれを購読しその思想に同調する人も少なくないわけで、彼らの考えを理解するには朝日を読むことも必要なのだろう。
36. 感動は、ためらわずに伝える
勉強になった部分、感動した部分、初めて知ったことを具体的に
38. ミスをしたら、再発防止の仕組みを考えよ
「気をつける」というのは行動改善に対して最も効果がない、という記事をどこかで見た。
46. 同期とはつき合うな
同期とつき合うデメリットは、比較して優劣を感じてしまうということと、視線が外へ向かわなくなってしまうこと。
同期で飲みに行っても、会社や上司のゴシップで終わってしまうことが少なくありません。傷の舐め合いや足の引っ張り合いになることさえあります。
そんな非生産的なことに大事なあなたの時間を費やすくらいなら、ぜひとも他流試合をしてください。夜の自由な時間は、できるだけ社外の人とつき合うようにしたほうがいいと思います。
飲みに行くのなんて単なる遊びであって、そこに生産性を求めてどうするのだろうと思える。
この本を見て散見されるのは、著者にとっては休息もプライベートもより良い仕事(ないし「成長」)のためにあるのだろうということ。「生きるために働く」のではなく「働くために生きる」人は研究者界隈にもよくいるが、この本が46万部も売れている(そして内定者への推薦図書などにされている)ことからすると、経済界にはこういう考え方の人が想像以上に多いのではないかと思われる。マジかよ。